東尾修 語る


 日本初のプロバスケットボールリーグ、bjリーグ東京アパッチが11日、元西武監督の東尾修氏(56=スポニチ評論家)の代表取締役社長兼GM就任を発表した。体調不良で入退院を繰り返していた山田朋一前社長に代わり、“プロスポーツの大先輩”である野球界から異例の抜てき。まだ2年目のプロリーグにどんな変革をもたらすか、東尾氏の手腕に注目が集まる。

 東京・銀座のビルにある、ガラス張りのオフィス。小さな会見場は記者で満員となり、廊下も人であふれていた。リーグ関係者がささやく。「廊下の人たちはリーグのスポンサーの方々です。東尾さんの会見に出てみたいと」。“東尾効果”は初日から現れていた。

 注目を集めた新社長は飾ることなく、素直に抱負を口にした。「経営の勉強はこれから。闇の中で階段を1歩ずつ上がるようなものと思っている」。初年度はメーンスポンサーなしと苦しい財政状況で戦い、「このままではチーム存続にかかわる」(関係者)状態だった東京にとって、広い人脈を持つ東尾氏の存在は大きい。しかし、本人は「広告塔として期待されているだけではつまらない。マスコミ対応やプロの経験を伝えるなど、私が協力できる部分はあると思う。やるからには本腰でやりたい」とチーム改革に意欲を見せた。

 社長就任を要請したのは、西武時代から親しい木村育生bjリーグ代表(株式会社インボイス社長)だった。「東京は前社長が入院して求心力を欠いていた。選手も個性が強いし、それに負けない人を据えないとチームを引っ張れない」。頭に浮かんだのが、現役時代に強烈なリーダーシップを発揮し、監督としてプロチームの実情も知り尽くした東尾氏。バスケットボールの経験がまったくない本人はもちろん当惑したが、話を聞くうちに「野球やゴルフのような伝統がない組織が、今から成長していくのは面白い」と魅力を感じたという。野球評論家も続ける予定で「最初は厳しいと思ったが、違ったことへ挑戦するいいチャンス。今は社長をやりながら評論ができなくてどうする、という気持ち」と両立に自信を見せた。

 社長として、まず取り組む必要があるのが人気面。昨季の観客動員数は1試合平均1831人と、地方に本拠があるチームに比べて苦戦した。しかし、昨季も数試合を観戦した東尾氏は「有明コロシアムはバスケットの甲子園になれる。天井からつり下がっているスコアボードは地方の体育館にはないし、あこがれる選手も多いはず」と指摘。「土日の午前中は会場が空いている。プロと同じコートでバスケット教室を開けば、試合も見たいという子供が増えるはず」と具体的なファン獲得プランも披露した。

 スタートしたばかりのリーグだけに、選手の待遇向上も課題の1つだ。「プロといっても、年俸500万円という選手もいる。それじゃ、東京では暮らしていけない。せめてJリーグぐらいには持っていきたい」。もちろん、年俸アップのためには昨季の3位を上回る結果が必要。社長とはいえ現場にはどんどん足を運び、プロの心構えなどをアドバイスする考えも持っている。「自分が就任したことで、選手がやる気になってくれればいい。優勝したら、野球みたいにハワイ旅行へ行こうとハッパをかけるつもり」。現役時代、弱小球団が常勝軍団に変わる過程を体験した新社長は、最後に野望を口にした。

少し期待したいと思う私は甘いんですかね。(苦笑)